夏休みスペシャル-5
「ふう」
バス停のベンチの上に立たせるようにして、私は背中からおろされた。
目線は哲より5センチくらい高い。
「お前、痩せた?」
「変わってないよ。」
ふ、と笑って上目づかいでこちらを見る哲と目が合う。
あどけない瞳は、2年前のまま。
何も変わってない。少なくても私は。私の気持ちは。
「哲、あのね」
「待って、俺から」
2年以上あたためてきた言葉を伝えようとしたのを、あっけなく阻止される。
「希世、こっち来て」
「こっちって・・」
「ここ」
そう懐を指さされたので、少しだけ右足を前に出す。
と、同時に私は、哲の腕の中にスッポリとおさまった。
初めて感じる、好きな人の腕の中。