夏休みスペシャル-4
「希世。」
耕貴と同じ大きなエナメルバッグを、哲は地面に置く。
「希世、久しぶり。」
その言葉だけで涙があふれそうになる。
さっきから、美佳や耕貴に泣かされそうになっていたから、涙腺が緩くなってるんだ。
鼻の奥がツーンとなる。
鎖骨がキューっと縮こまる。
でも、こんなところで涙を流すわけにはいかず。
かといって、声を出そうとすると「好き」と言ってしまいそうで。
「て・・」
哲。
やっとのことでそう言おうと、一歩踏み出したら思いっきり腕を引っ張られた。
「て、哲?」
突然のことに涙もひっこむ。
哲は私の腕を引っ張って、外へ走り出した。
私は靴も履けずに、靴下のまま飛び出す。
「哲、痛いよ」
「あ、わり」
哲はそう言うと、私の背中に乗せた。
「ちょっ無理!恥ずかしい!おろして!」
ポカポカと、2年前よりずっと大きくなった背中を叩くが、哲はとまらず、
バス停まで来たところで、やっと止まってくれた。