夏休みスペシャル-3
「耕貴、久しぶり。」
「久しぶり。
なんっか、お前垢ぬけちゃったなあ。
色白くなったんじゃない?ちゃんと日光浴びてる?」
無駄に大きなエナメルバッグを床に置きながら、耕貴は机の上の唐揚げをつまんだ。
「あっちょっと、手洗ってからにしてよー!」
美佳が耕貴の右手をバチっと叩く。
こんな普通の光景が、私の胸を締め付けた。
バス停で美佳と会ったときのように涙が出そうなる。
「なんか、泣きそうだー」
「なにそれっ!
穴原村が恋しくなった?」
唐揚げを一つ口に運びながら、美佳は笑った。
その時だった。
耕貴が来た時より勢いよく引き戸が開いた音と共に、私を呼ぶ声がした。
「希世!!」
その声は、1番聞きたくて、1番聞きたくなかったものだった。
「キヨ。」
美佳が私の手を握り、深くうなずく。
それを合図に、私は部屋を飛び出した。