第10話-4
「・・・早貴、もう終わりにしよう、こういう関係は」
ぐす、と鼻をすすり俺を見つめる娘。
泣き顔はまるで子供みたいに幼く、痛々しかった。
もうやめなくちゃいけないんだ、体を重ねあうのを。今まで早貴が求めるままやってきた事を。
・・・それ自体が早貴を苦しめているのなら、やめさせなくちゃ。
「終わりにするって・・・?」
「父親と娘だけで同じ屋根の下で暮らすのをやめるんだ」
きっと他に誰もいないからずるずると溺れていったんだ。
ずっと避け続けてきた、他の家族の事を考えるのを。
早貴しか見たくなかった、娘がいればあとは何もいらないと思い込もうとしていた。
とうとうそんな自分と決別する時が来てしまった様だな。
「やっと会う気になったんだねお父さん」
「・・・ああ。だって、このままじゃ誰も止める人がいないからな」
踏みとどまる時はここしかない。
ここで出来なきゃ・・・終わりだ。早貴との関係は更に深みに嵌っていくだろう。
俺はよくても、やっぱり早貴が幸せになれない。
自分と娘の幸せ・・・秤にかけたら答えは決まってるだろう。
「・・・うん、やっとまたお母さんとお兄ちゃんに会えるんだね、嬉しいな」
決めて、いまさら怖くなってきた。
ほぼ二年もまともに会ってなくて顔を見ていない。
果たしてちゃんと会えるのか?弱虫の俺が。
・・・でも早貴の為なら大丈夫だ、きっと。
〜続く〜