生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-4
「そんなの、誰も何も得しない」
キミさんが呟く。それに答えるようにオッさんも
「誰かを蹴落とすのは楽だぜ。けど、自分がのし上がるには努力が必要だ。我慢出来ないハムにゃ到底無理だな」
と誰に言うでも無く呟いた。
確かに、そうだ。
オッさんがさっき、ハムさんは持久走を毎年棄権していると言っていた。
持久走は確かに辛い。長いし苦しい。
きっとそれから逃げているんだろう。
「それなら…」
キミさんとオッさんの正論に、それでも宝さんは諦めなかった。
「細井先輩が自分で努力するのなら良いんですよね?寿絵瑠が説得してみせます」
「たぶん無理だと思うぜー?ハム、辛いこととか面倒臭いこと嫌いだからな」
「分からないではないですか!なぁ、優もそう思うだろう?」
…え、ぼ、僕?
「え、あ…うん、まぁ…。分からない、かも」
どうしてここに来て僕に話を振るんだ。
「寿絵瑠、追い掛けます。ハムをスターにしてみせます!」
…宝さん、とうとうハムって言っちゃったし。
「ま、無理だろうけどな…やってみれば?」
オッさんがヘッと鼻で笑う。
すると宝さんはズンズンと僕に詰め寄り、むんずと襟首を掴んだ。
あれ?何か目の中に炎が見える気が…。
「ゆくぞ!優っ!!」
「あ、へ?何で僕まで!?」
引っ張られるがまま、僕らは第4多目的室を出て行った。
玄関付近でハムさんに追い付いた。丸い背中が暗く沈んでいる。
「細井先輩!」
宝さんが叫ぶと、ハムさんが振り返った。
「宝 寿絵瑠?」
「っはぁ…良かった〜」
僕も追い付けたことに、安堵のため息を吐いた。
「細井先輩!寿絵瑠たちと共に特訓をしましょう?」
宝さんに呼び掛けられて若干にやけ面だったハムさんが、無表情になった。
「特訓?」
「そう、特訓です」
それとは対照的に宝さんはニコニコと白い歯を見せながら、更に続けた。
「寿絵瑠たちがこの1ヶ月、あなたの成績が上がるよう特訓してやります」
てか、寿絵瑠『たち』?てことは僕もなの?
どんどん話が進んでいく。僕の知らないところで。