生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-16
「ハムさん!本当にスターになっちゃいますよ!」
ハムさんは少し笑った。
あと15メートル…10メートル…5…3…1メートル…。
「ゴーーーーーーールッッ!!!」
わあっと拍手が降り注ぐ。そんな中にハムさんがごろりと倒れ込んだ。
天を仰いでぜーはーと息を吐いている。
でも、何だかとっても嬉しそうだった。
「やっ…た……!」
「はいっ!」
「俺…初めて…走り…切った…!」
「よくやったな!寿絵瑠は信じていたぞ!貴様は出来る奴なんだ!」
「あり…がとな」
「何。貴様の努力の勝利だ」
ハムさんは最下位だ。
だけど間違いなく、今この瞬間、ハムさんはスターになった。
まだ鳴り止まない拍手の中、とたとたとこちらに走り寄ってくる影があった。
「細井先輩!」
背丈の低い女の子だ。
脇目も振らず、ハムさんの側にしゃがむ。
たぶん僕と同じ1年生だと思うが、ハムさんと並ぶと更に小さく見えた。…ハムさんの半分くらいに。
「あ…え?」
ハムさんは驚いたのか目を丸くして起き上がる。
「どうして?」
「私、感動しました!」
どうぞと彼女はハムさんにタオルを差し出す。
女の子らしいピンクのタオルだ。
「ありがと」
ハムさんがニヘラッとそれを受け取った。
「私、応援してましたよ。頑張りましたね」
「うん」
ハムさんは目を伏せて呟く。
「声、聞こえたから…頑張れた」
ああ、そうか。
もしかしたら一番初めの声援は彼女だったのかもしれない。
わああっとまだ冷めやらぬ空間の真ん中に僕たちはいる。
汗でぐちゃぐちゃの一時だけかもしれないスターと一緒に。
その状況を頭の中で理解し、僕自身の行動を改めて振り返ると顔から火が出そうなくらい、恥ずかしかった。
大衆の前で大声出した…たくさんの視線を感じた…こんなの、初めてだ。
「何を赤くなっている?」
そんな姿を僕は宝さんに笑われてしまうのだった。