生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-13
「あ、宝さん!どう?調子いい?」
「おお、優か。もちろんだ。全てにおいて記録を塗り替えてやった」
……愚問だったようだ。
そして、持久走だけを残してギャラリーに上がっていく。
僕は知らなかったのだが、どうやらこの学校においての持久走とはちょっとしたイベントのようなものらしく、最後に他の学年が見守る中各学年男女に別れて走る。(と、オッさんが目を輝かせて言っていた)
僕らの次はキミさんと小鞠さんの二年生だ。
キミさんは…あれ、いない…?
「オレを探してんのか?」
「ぅえっ!?」
後ろからその主の声がして僕は飛び上がった。
僕の隣にストンとキミさんが腰を下ろす。
「な、えっ!?キミさんいいんですか?」
「あんなくだらねぇもん、やってられるか」
「………」
「ここにも長くは居てられないな、それじゃ」
キミさん…。強者だ。
どこに隠れてるつもりなんだろう?
打って変わって小鞠さんは何やらニコニコと楽しそうだ。
しかし、ギャラリーに手を振り返しつつ、愛想を振りまきつつ、お喋りしつつでどうやら成績は散々みたいだ。
僕が見た限り、反復横飛びの成績は3回。
…どうせ気にもしないだろうからいいか。
さてさて、とうとう3年生。
グラウンド内をあっちこっちに駆け回る金髪がいた。
オッさんだ。
思った通り、オッさんはスポーツ大好き少年だったようで、全ての競技のトップを独走していた。
そのくせ、友達同士でふざけたりもしているためギャラリーからも歓声や笑いが沸き起こっている。
女の子たちもキャーキャー騒いでいるので、本人も気分が良さそうだ。
「キャーッ!あの先輩何ー!?ウケるんですけどっ!」
「アッハハ!猿だ猿!キンパ猿!」
「キンパ猿言えてる!」
しかしその歓声の詳しい内容は知らない方がいいかもしれない。
哀れオッさん…。
そして、一番心配なハムさん。
どうやらお世辞にもいい成績とは言えないようだ。
早速息も上がって大きく肩を上下させている。
だけど全てに全力で打ち込んでいるのは見ていてすぐに分かった。
「…優」
ふいに宝さんの声がした。
振り返ると、タオルを下げた宝さんが微笑んで立っていた。
ジャージ姿もイイ。
「そんな不安げな顔をするな」
そして僕の隣に座る。
グサグサと外野の視線が刺さる。嫉妬の槍で刺殺されそうだ。
「そんな顔してたかな」
もう宝さんとの話に集中しよーっと…。気にし出したらキリがない。
「この寿絵瑠が指導したのだ。大丈夫、ハムは最後までやるさ」
ハムさんを見つめる目が優しい。
母親が子供を見つめる目に似てる。
そうだよ。
ハムさんはあんなに頑張ってたんだから、それを無駄にする訳ない。
好きな人が見てるかもしれないのに格好悪い真似なんて出来ないよ。
だって男なんだから。曲げられないプライドがあるから。
「そうだね」
そして、とうとう持久走が始まる。