生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-12
「あー、あ、そうだ。でもな、そうも言ってられない状態になったんだ」
ハムさんが少し頬を赤らめ、眼鏡の奥のつぶらな瞳が少女漫画のごとくキラキラした。
「好きな子が出来たんだ」
それか!でも、あれ?
「その割には小鞠さんや宝さんにデレデレしてませんでした?」
するとハムさんは
「アイドルと好きな子は違うだろ?お前はアイドルに本気で恋する派だったのか?俺は違うんだよ!アイドルは飽くまで高嶺の花であって手に届いたり、同じレベルで考えちゃいけないんだよ!
分かるか?
小鞠ちゃんも宝 寿絵瑠もそれなんだよ」
と、熱く語った後、呆れたようにため息を吐いた。
……。そう、なんだ。
「同じ清掃委員会の一年生の子なんだ。その子は俺みたいな奴にもニコニコしながら話してくれて、仲良くしてくれて、俺そんなの初めてで格好付けたくなった」
へぇ、好きな子のために頑張るのか。
「素敵じゃないですか!でも、何で正直に言わなかったんですか?」
ハムさんははにかみながら笑った。
「だってそれを言っちゃったら格好悪いだろ」
あ…。
『自分でそれを言っちまったらダセェからだ』
前にオッさんが言ってた。ハムさん、プライドを守りたかったんだ。男だな。
「まっ、言っちゃったからもう意味無いな」
「そんなこと無いです。やっぱりハムさんはすごいです」
心からそう思う。
ハムさんの気持ちは本物だ。
「ありがとな。…それじゃあ、明日」
「はい!頑張りましょうね!応援しますから!」
ハムさんは左に曲がっていった。
もう情けない後ろ姿なんかじゃない。
こんな表現合ってるか分からないけど、僕は明日が楽しみだった。
僕の学校のスポーツテストは全校生徒が近くの陸上競技場へ移動し、各学年ごとグラウンドに降りて行って競技を行うというものだった。他の学年はギャラリーで見学だ。
先行をきるのは一年生。ソフトボール投げも短距離も反復横飛びも何もかも、あの特訓の甲斐合ってか去年よりも遥かに良い成績だった。