生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-11
「でも、ま、俺も出来るなんて思ってなかったからそりゃ他人が信じてくれるわけねぇよな」
ハムさんは前を向いて短く息を吐いた。
落ち込み気味の言葉とは裏腹に、その顔はなぜだか清々しくて…。
僕にはやっぱり納得出来ないことがあった。
「ねぇハムさん。僕ハムさんに最初に会ったとき、思ったことがあるんです」
「は?」
「……もしかしたら違うかもしれません。僕の思い過ごしかもしれませんけど、言ってもいいですか?」
「おう」
「ハムさんがスターになりたいのは、優越感に浸ってみたいんじゃなく、本当は他の理由があるんじゃないですか?」
ピクンとハムさんが立ち止まった。
「どどど…どうして、ショんなこと?」
…分かり易く図星だ。
「ハムさんがすごく必死だったからっていうのが理由です」
アガアガとテンパり度100%のハムさんに、僕は言葉を続けた。
「スターになりたいだなんて大まかな理由にしちゃ、継続力があるなぁと…。もしかして、そのフワフワした理由に隠れて、一本の曲げられない芯が通ってるんじゃないかなぁ、なんて。勘ですけど…」
アハハ〜と頭を掻く。自分の考えを人にぶつけるのはすごくドキドキした。
ハァッとハムさんが深くため息を吐いた。
「お前ヘラヘラウジウジしてるだけかと思ったら違うんだな」
…僕ってそんなに気弱かな。
「恐縮です」
「で、その理由も分かってんの?」
「いえ、全然!僕らに知られたくないことなんですか?」
また僕らは歩みを進める。
あーうーんいやーなどと首を捻っていたハムさんだったが小さく「ま、いっか」と呟き
「お前にだけ教えてやるよ」
とばつが悪そうに笑った。
さながら、悪戯がバレた子供のような、こちらもつられて笑ってしまいそうな顔だった。
「俺さ、昔からこんなでさ、デブで運動も勉強も出来なくて、いいとこなんか一個も無かったんだ」
「そ、そんなこと」
「へっ。でもさ、それでもいいやと思ってたんだ。出来ないもんは出来ない。無理なもんは無理。辛いことはしない。
別に誰も俺を見てないし、俺も気にかけなきゃいけないような人もいなかったから、見た目とか形振りとかどうでも良かった」
「あれ?小鞠さんはいいんですか?」
「お前、小鞠ちゃんを一人の女として見てるのか?あの子はいわばアイドルみたいなもんだろうがよ」
この非常識野郎が…と捨て台詞を吐かれてしまった。
………。
しかし、そんな僕を余所にハムさんは語り続けてくれた。