調教物語(その1)-1
研二郎が彼女と知り合ってから大分経つ。
彼は未だに、彼女の白い肌と優しさを思い出すときがある。
それは当時、何度も何度も、彼女を縛って調教し、激しく燃えた
あの(熱い思い出)があるからなのだ。
彼女と交わした数々のその行為は未だにはっきりと
研二郎の脳裏に焼き付いている。
勿論、彼が調教した女は彼女だけではなく両手の指の数でも足りない。
しかし、その中でも彼女とのその期間は、熱き思いとして今でも忘れられない。
多分、彼女の心と身体に、今も忘れられない烙印のように刻まれているのに違いない。
永遠に・・・。
初め、その世界を知らない女に、激しさ厳しさ、被虐の悦びの数々を教え、
身体に記憶させ、妖しい快楽と堕落の世界に堕とし、
それらを彼女にネットの世界から、リアルの世界へと身を以て教えたのである。
彼女の白い肉体の皮膚と肉片、粘膜の一枚一枚、
熱き肉塊の中に叩き込まれたその記憶を、彼女は忘れることは無いだろう。
その女の名前を恭子と言った。
研二郎が初めその恭子と知り合ったのはネットだった。
或るサイトで知り合い、そこでの会話やメールなどを通じて知り合った。
そのきっかけは、研二郎があるサイトのチャット部屋の主催をしており、
彼女はそこに来ていた見学者だったからである。
研二郎はSだが、そこで他のS男性も,M女性も普通の人も
自由に出入りしてフリーな状態で各々の会話を楽しんでいた。
ただ、誰もがするお茶のみの、おしゃべり感覚で遊べる空間ではなく、
いわゆるSMをベースにしたものである。
よく飛び交う会話では、専門的なSM用語や妖しい言葉が流れ、
それを知らないで入った無垢な人は驚き、いつの間にか消えていたこともある。
そこは会話が中心で、言うなればSM喫茶店のようなものだった。
ただお互いの顔は見えないが、自分が付けたハンドルネームという仮の名前が、
その人物の個性である。
顔は見えなくても、言葉で充分に心は通うものである。
会話の主な内容はSM的ではあるが、皆それぞれに紳士的だった。
そこでの会話を楽しむ常連の男女の数は少なくなかった。
そこでは、SMクラブでM女性として働いており、
クラブでの働きぶりや、自分がお客さんに調教された話をする女や、
何人かの女を飼っていると自慢げに言う男や、様々な人の溜まり場になっていた。
そこは出合いの場所を積極的に提供する場所ではないが、
仮にそうなった場合には、本人達の意思に任せていた。
そこの主催者である研二郎の紳士的な振る舞いが良かったらしく、
結構な数の男女が遊びに来ていて、楽しい空間の場所だった。