唯高帰宅部茜色同好会!(第一章)-7
「すみません、ユーリ。負けてもよかったのですがルールでしたから」
アイサは申し訳なさそうな顔をして言った。
「いいよアイサ。負けるのは悔しいけどな」
爽やかな笑顔を見せるユーリ。
眩しい。悔しい。
そんな様子を眺めていると、背中を突つかれた。
振り返るとマリィ。見るからにやばいって言いたそうな顔をしている。
そうか、お前も事の重大さに気付いたか。
「ちょっと、どうするのよ」
「大丈夫だ、キスケに任せてある」
決着がついた時に素早くキスケと打ち合わせた。
こういうときに意思疎通ができる幼なじみっていうのは、やはり便利である。
「さ、罰ゲームだが…」
ユーリから切り出した。
チラリとキスケの顔を見て頷く。
キスケも頷き返した。
さすが、馬鹿だけどいいやつだ。
「ユーリ、俺に告白してくれないか?」
一気に周囲が凍りつく。
何言ってんだこの馬鹿。
「キスケ、それは…どういう」
「…もしかしてキスケってユーリが好きなの?」
真面目ちゃんと天然ちゃんはしっかり本気だと思ったらしい。
「まあ皆の者、静まれぃ」
キスケがそう言うと、マリィは明らかにイラっとした視線を俺にくれている。
こんなはずじゃないと思ったんだがキスケはキスケらしい。
「俺、お前みたいな爽やかでかっこよくて背も高くて勉強もスポーツもできるユーリが好きだったんだ。だから、俺に告白してくれ。そうすれば、ユーリを他の女にとられずに済む」
「キスケ…すまん、お前とは」
「わかってるよちくしょう!」
真面目に返すユーリもユーリだが、キスケが先に耐えられなかったようだ。
キスケは自分で自分の太ももを叩いた。
前言撤回。やっぱだめな幼なじみだわ。
「ね、ユーリ、キスケじゃないけどユーリってモテるからさ。告白しちゃったら絶対その相手は彼女になるから茜色にも出れなくなるんじゃない?」
さすがマリィ。俺が言おうとしたことを代弁してくれた。
「でも、ルールはルールだろ」
ユーリはそう言った。
うーん、ユーリもまた真面目だからな、どうにかならないものか。
しばらく沈黙が流れる。
「…ま、俺も茜色に出れなくなるのは嫌だからさ、何かいい案を考えておくよ。罰ゲームは明日でいいか?」
「あ、ああ」
さすがユーリ。
自分でそういうことを考えられるところはすごいと思う。
なんか悔しい。