唯高帰宅部茜色同好会!(第一章)-16
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「やべーぞこりゃ」
俺は携帯を閉じると机に突っ伏した。
「どしたの」
ちょうどトイレから戻ってきたマリィが言う。
「キスケはまあ予想してたがユーリ妨害失敗、サキは須藤先輩にバレた。場所が体育館裏とわかっただけ上出来だが」
「なに、サキがバレたらいけないの?」
「…奥の手を用意してたんだがな」
どちらにしろユーリを止めないと話にならない。アイサ、頼むぞ。
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「……なぁ、マリィ」
「なに?」
ユーリの方についている二人から一向に続報がないので、それを待っている間に、気になることをマリィに訊いてみることにした。
「マリィはどうして茜色以外のやつと仲良くしないんだ?」
俺達は放課後はいつも一緒だけど、それぞれ別に友達はいる。
俺はともかく、キスケは盛り上げ役として、ユーリは男女関係なくいいやつだからと男からも人気だ。
サキだってよくいろいろな女子と話しているのを見るし、アイサは部に入ってはいないものの、土日は剣道場に通っているから剣道部の友達とよく一緒にいる。
だが、マリィは茜色の誰かが声をかけないと、いつも一人だった。
別に周囲に嫌われているというわけではない。
自分から誰にも寄り付かないんだ。
だから綺麗なのにモテないというのもある。
「……聞きたい?」
マリィは困ったような今にも泣き出しそうな、不安定な表情だった。
「…すごく」
俺は低い声でそう口にした。
真っ直ぐマリィの顔を見て。
「……みんなに言うのは気が引けたけど、じゃあアッキュにはおしえてあげる」
「…おう」
「あたし、中学のとき、いじめられてたんだ。クラスの子達に」
「はぁ?」
逆にリーダーシップを発揮して頂点にいそうなのに?
「…多分、今アッキュが思ったことが原因かな」
「っ」
ドキッとした。
「あたし、こういう性格だからさ。何が何でもあたしが場を纏めてやろうって躍起になってさ。周りに注文ばっかつけてたら、自然と、ね」
「……」
「うち、両親が会社やってるでしょ?だからお金持ちだっていうのから始まって何から何まで、やることなすこと叩かれた」
「…」
喉がカラカラになる。マリィの表情からして、本当に壮絶だったことが容易にわかる。
それにマリィは、手を震わせていた。