第8話-3
「ちょっと煮込まなくちゃいけないから時間かかるんだよね・・・」
ちら、と俺の方に目が見えるか見えないかくらいの微妙な角度で振り返る。
時間がかかるという言い方が妙に引っ掛かるな。
「・・・やっとく?うふふふふっ」
「何をだ」
「わかってるくせに。お父さん、元気になっちゃってるよ」
そんな訳無い、と目線を落とした所で早貴に笑われた。
元気になったならないは関係ないのか。俺に反応させるのが目的だったんだな。
「だめだよ、掻き混ぜてなくちゃ焦げちゃうから」
相変わらず早貴の態度は冗談とも本心とも判断がつかない。
しかし、ただ父親を驚かせたいだけなら、悪戯好きであろうと我が身を張るだろうか。
男の前で女が尻を曝け出すという行為。
即ち、それは・・・
「ひぁあ?!お、お父さん?!な・・・んん!」
いつでも準備出来てるよ、と言いたいんだな。分かってる、お前の願い聞き入れた。
後ろから押さえ込む様に抱き締め、張りのある剥きたての茹で卵の様なお尻を掴む。
薄着ではあったが火の前に立っていたせいか、揉みしだく肌が汗ばんでいて、手に張り付いてくる。
「だ、め、やりすぎ。ちょ、おとうさ、あ・・・んぁッ」
「誘うくせにいざやられると嫌がるのはお前の良くない癖だな。お父さんはそう思うぞ?」
「やッ!みみ、こりこりしないでぇ〜」
赤らんでいる耳の裏側を舌先でくすぐり、耳たぶをしつこく舐め回した。
早貴は、手は鍋を掻き混ぜているので使えず、肩で俺の体を退かそうとしてくる。
懸命に抵抗する姿が何だか可愛らしくて、思わずその白い肩に唇を近づけ・・・
「あはぁっ!やぁん、痛いよぉ!」
まるで吸血鬼の如く噛み付いてしまった。
流石に血までは吸わなかったが、代わりにまとわりついた汗を味わう。
「もしかしたら早貴が悪戯好きなのは俺の遺伝かもしれないぞ」
「やぁ・・・ん、チクチクしてるよぉ〜・・・」
揉み続けているお尻が震えてきた。
それに加えて耳たぶや肩を悪戯されているのに、カレーを焦がさない様にしている。
「焦がすなよ。もし焦がしたら後でお仕置きだからな」
「うぅ〜〜・・・」
自分でも驚いている。
父の日の時は違うが、風呂でした時は勢いに任せて、自分から早貴にしてもいいかと聞いていた。
今日その時と全く同じ様に早貴を自分の手で弄んでいる。
早貴に誘惑され続け、あれ程悩んでいたのは果たしてなんだったのだろうか。
「おとぉさぁん・・・」
お尻が動き、俺の手を退けようとしてきた。誘ってきたくせして、逃れようというのはお父さん許さないぞ。
だが、嫌がっているにしては動きが変だ。
撫で付ける手のひらに対して、やけに押しつける様に動いている様な・・・
「んうぅ!んん、はぁはぁ、は、ああっ」
足を爪先立ちにしてお尻の位置を上げ、指に擦り付けてきた。
まるで、お尻を使って俺の指の感触を味わおうとしているみたいだった。