ラプンツェルブルー 第7話-2
「埋めるのはいつ?」
もう『何を』とは訊かない。
「近いうちに」
「手が要るんだったら、連絡してくれば?」
いよいよ降り始めた雪を揃って見上げていると、片側の耳に響く、くすくすと小さな笑い声。
「……ごめんね」
何の事か解らずに彼女に視線を移すと、空を見上げたままの彼女の横顔がそこにあった。
眩しそうに細めた双眸の長い睫毛に留まる雪がふわりと溶けていく。
「津田くんってお節介じゃなくて放っておけない人なのね」
ああ、最初の『あれ』か。
今日も彼女の長い髪はきっちり編みこまれていて、小さな白い耳が雪の寒さでうすらと朱を刷いている。
互いが散々な印象を受けたあの事件からそんなに時間は経っていないのに、随分な様変わりを見せた互いのイメージ。
僕には珍しいマイナーチェンジに苦笑いが漏れる。
「言っとくけど」
と前置いてから僕は再び空を仰いだ。でないと言えそうになかったから。
「基本、他人のことに首を突っ込まない主義だから」
再びくすくすと笑う声に混じって聞こえた「ありがとう」に、空を見上げておいた事は間違ってなかったと思うのだった。