あの日の君にサヨナラを-2
「何がだ」
「あなたを守れなくて」
「気にするな」
「でも………」
「気にするな、歩は関係ねぇよ。ああなったのは仕方の無いことだ」
「それでも……」
我が幼馴染みながら死んでからも律儀な奴だ。
「大丈夫だ、アユ」
アユ、これが俺が幼馴染みを呼ぶときの呼び名。そう呼ぶと大抵喜ぶ。
「そう呼んでくれるのも久し振りだね」
嬉しそうに目を細める。それから沢山の話をした。歩が生きていた時の話、歩が死んでからの話。自分の感情を吐露し無言になると歩が突然言う。
「もう大丈夫?」
「ああ大丈夫だよ、アユ。だからお前はゆっくり眠りな」
「そう」
にっこりと顔をこちらに向ける幼馴染み。背後には綺麗な夕日が空を赤く染めていた。
「じゃあ最後の質問」
「何だ?」
「私の事好き?」
「ああ、好きだよ。歩」
「そっか、ありがとう」
その一言を聞くと歩の身体は、足から徐々に消えていく。
「誠」
「何、歩」
「ありがとう、さよなら」
「ああ、さよならだ」
歩は泣き笑いした顔をこちらに向けながら消えていった。
「……………」
無言でそこにいると夕日の光が直接目に入る。
そこで目が覚めた。
「夢か」
随分リアルな夢だなと思って身を起こす。先程夢の中で歩が座っていた所を見るとそこには彼奴が生前にしていた髪留めが転がっていた。
「こう言う夢もありだな」
そう言って髪留めを拾い胸ポケットに挿す。
「行こう、歩」
(うん!!)
幻聴かもしれないがその時に耳元で幼馴染みの声が耳を叩いた気がした。