秘密-8
─生きてない─
そう思った。
私は唇に触れ、そっとくちづけをした…
何も変わらない。
眠り姫は王子様のキスで目覚める、なんておとぎ話があるけど、陸先輩は目覚めなかった。
(逆じゃダメなのかな?
そもそも、私は陸先輩のお姫様なんかじゃないんだ…)
ぽたぽたっと陸先輩の顔に涙が落ちた。
(ドラマだったら、これで目が覚めるのに…)
おとぎ話なんかじゃない。
ドラマなんかじゃない。
これは現実。
これが現実。
─陸先輩は、死んだ─
私のせいだ…
私が、陸先輩を好きになったから!
神様の前で、篤也への永遠の愛を誓ったのに
篤也との子を授かったのに
これから三人で一緒に同じ道を歩んで行こうとしたのに
私が…陸先輩を好きになったから…
だから、神様が怒って私に罰を与えたんだ
篤也だけを見るように
篤也だけを愛するように
陸先輩を連れて行ったんだ…
秘密にしておこう
誰にも言わず、そっと心に閉まっておこう
そう決めていた
ただ想っていられれば、それで良かった
なのに、こんなことになるなんて…!
ごめんなさい…
好きになってごめんなさい…!!
陸先輩は、静かに眠り続けていた──