秘密-4
「ごめん電話だ」
「いいよ、私はここで待ってるね」
「ごめんね、すぐ戻るね」
そう言って、えみはラウンジを出て行った。
私が一人でジュースを飲んでいると
「あれ?」
後ろから声がして、振り返ると
「陸先輩!お久し…ぶり…です…」
私は陸先輩の隣にいる女性に目を奪われた。
キリッとした目が印象的で、小柄で知的な感じの綺麗な人。
体全体から溢れ出すオーラが『出来る大人の女性』だというのを物語っていた。
「彼女さん…ですか?」
「そう」
私が恐る恐る尋ねた問いに、先輩はさらっと答えた。
「えっと…いつから付き合ってるんですか?」
先輩は彼女さんと顔を見合わせる。
「八月からだよ」
彼女さんが答えた。
笑顔が輝いて見えた。
「八月…」
「うん、八月の半ば頃から」
「あの…失礼ですけど、おいくつですか?」
「陸と同じ」
(1コ上か…)
「…じゃあな」
そう言って先輩は行ってしまった。
彼女さんと手を繋いで…
彼女さんが嬉しそうに笑っている横顔が見えた。
(そっか、先輩はああいう人が好きなんだ)
『敵わない』
そう思った。
私とは全然タイプが違う。
(そっか、先輩彼女出来たんだ…)
私は心臓の辺りをギュッと掴んだ。
鼓動が速い。
何故だろう?
うまく息が出来ない。
苦しい。
視界も霞み、ぼやけてきた。
(先輩っ!)
彼女さんと手を繋いで去って行った先輩の姿が頭から離れない。
(ヤダっ!待って先輩、待って!!)
「…ちゃん、なっちゃん!」
私はハッと顔を上げた。