フリースタイル6-4
電車を3駅ほど乗り継いで少し歩いた所にヒカルくんの家はあった。
オートロック完備。
エレベーター付き。
結構良い感じのマンションだけど、あんまり広くはなかった。
そんな中で立派な機材がうまく収まっていた。
「とりあえず何曲か入ってるからええ感じなのピックアップしといてー」
ヒカルくんはそう言ってあたしにヘッドホンを渡す。
「はぁい」
バラード、アップテンポ、たくさんありすぎると迷っちゃうものだね。
聞きながら部屋を見渡すと赤いマジックにハートが書いてある古めのCD-Rが奥の棚に放り込まれているのが見えた。
別に特に思うでもなく、なんとなくコンポに入れて再生してみる。
少し間があいて、ギターと今よりちょっと下手くそなヒカルくんの歌が入っていた。
初めて人を好きになったら
叶わなくてもいいと思ってた
君の笑顔を見ていられるなら
それで充分だと思った
でもなぜなんだろう
君の笑った顔も
泣いた顔も怒った顔も
全部全部
隣で見ていたいんだ
「あかーん!!!!」
ヒカルくんが叫んだ時には時既に遅し。
「聞いた!?全部聞いたんか!?」
ヒカルくんが必死にあたしに聞いてくる。
「全部聞いちゃった...」
あたしはちょっとはにかんでみせて誤魔化そうとしたが、ヒカルくんには逆効果だったらしい。