邪愁(その1)-6
…あなたは、わたしがそんな女だと思っていたのね…あなたは、わたしを縄で縛りあげ、陰部を
弄くりまわしたわ…欲しがるわたしの唇と陰部のまわりを、焦らすように萎えたペニスの先端で
なぞるだけだったわ…
そうよ…あなたは火照らしたわたしの体に鞭を振ることでしか、勃起なんてしなかったのよ…
お遊びだなんて…嘘ばかり…あなたは、わたしが鞭を好む女だと言ったわ…勝手なことを言わな
いで…
首輪をつけられたわたしの顔が鞭の痛みに耐えるのを、あなたは満足そうに眺めていたわ…わた
しには、あなたみたいな変態趣味はないの…誤解しないで欲しいわ…
開け放された窓からは、熱帯雨林特有の湿った風が密やかに吹いてくる。男の樹液で濡れた陰唇
につけたラビアピアスが、その風に吹かれるように心地よくわたしの性器を刺激する。
男は、朦朧とした全裸の私を、犬小屋のような錆びた鉄の檻の中に入れると、鍵をかけ部屋を
出て行った。濃厚で芳醇な精液の匂いが私の陰部から漂ったとき、私は檻の中で尿を漏らした。
薄い黄色の尿が床にたらたらと流れる。
私の中で射精したのは、あの卵から生まれたペニスだったのか…いや、もしかしたらあの男のも
のだったのか…。卵の幻覚が、私の中に仄かな微熱を余韻のように残していた。
檻の格子から窓へ目を向ける。灼熱の太陽が沈んだ血のような黄昏の密林の空に、奇怪な野鳥が
羽ばたいていく。
点在する湖には鬱蒼とした原生林が迫り、私の好きなどろりとした原色の風景を描いていた…。