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ホーンテッドアパート
【ファンタジー 恋愛小説】

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ホーンテッドアパート-3

入学式に備えて早めにベッドに入ったけど、興奮してなかなか寝付けなかった。
ふと寝返りを打つと、何やら目の前にぼんやりしたものが映ったんだ。

(こんばんは。明日から大学生だね、おめでとう)

体が透明で、寄り添う様に枕元に座っていた女の子。
一目見てこいつはあれだ、と思って逃げ出そうとした。
・・・そこで初めて金縛りってものを味わったんだよな。今思い出しても、その時の恐怖は薄れる事は無い。
殺される、俺は殺されるんだ、この幽霊に。金縛りで震える事すら出来なかった。

どれくらいの時間だったかはっきり感覚が無い。気が付いたらもう朝で、慌てて飛び出していた。
いつ金縛りが解けたのかその時は気にする余裕が無くて・・・

そしてその日の夜にまた出てきたけど、今度は金縛りにはならなかった。
(聞いてないぞ、こんな曰く付きの物件だったなんて、管理人さんに文句言わなくちゃ気が済まない!)
(多分知らないんじゃない。見える人にしか見えないから)

寝泊まりするとこに幽霊がいるってのはかなり怖かった。
でも、話すうちにいつの間にか・・・

(へーそのバンド私も好きだよ。知ってる?名前の由来は花なんだって)

自分でもよくわからないけど、なんだか、次第に普通の人間と話してる様な感覚になっていった。
それで、今に至るってところかな。慣れちゃえば幽霊でも怖くなくなるもんだ。


磨依自身はいつから自分がこの部屋に居たのか、全く記憶が無いらしい。
部分的に実体化できるのも、そもそも何故自分が幽霊になったのかも分からない。
覚えているのは¨南磨依¨
自分の名前、ただそれだけ。


『汗で髪がぺたーんてしてる。あははは角刈りのお巡りさんみたーい』

特に他愛のない事でもけらけら笑う磨依。
愛嬌のある人間は大学にも沢山いるけど、そういう幽霊は初めてだ。
幽霊は怖い存在だと勝手に思い込んでると、磨依と一緒に暮らしてから気付いた。
幽霊のくせにホラー映画を怖がるし、夜寝る時も完全に真っ暗になるのを嫌がる。
前は友達が時々泊まりに来てたんだけど、最近はなるべく遠慮してもらっている。
・・・俺が自分の事を構ってくれない、とか言い出して口を利いてくれなくなるからだ。

(俺以外には磨依は見えないんだし、誰もいないのに会話したら変に思われるだろ?)
(知らない!明なんかもう知らないもん!いじわる!)

あの時は参ったなぁ。
まったく、苦労させてくれるぜ。泊まりに来ない様に納得させる理由を考えなくちゃいけなかったんだからな。
結局、うちの管理人はあまり騒がれるのを嫌がるとか誤魔化すしかなくてさ・・・

『明・・・』
「なんだ?何か用か」

磨依は俺の前に正座し、手を俺の手に重ねて実体化させた。
ふにふにと柔らかい感触が包み込んでくる。


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