天気-1
「いいか?天気には性格があるんだよ」
また兄貴の下らない話が始まった、と思いつつ惰性で映画を見続ける。
何回も放送されて、台詞どころか音だけ聴いてもどの場面か分かるくらい見てきた。
飽き飽きしてるけれど、それでもこの下らない話よりは幾らかましだから我慢している。
「まず晴れ。晴れは洗濯物を乾かしてくれる、人の役に立つ事を喜ぶ優しい奴だ」
・・・私を笑わそうとしてるのかな。でも冗談で言ってる様には聞こえない。
「次に雨。こいつは人を困らせようとする意地悪な奴だ」
わざわざ口でやめろって言うのも面倒で、飲み終わったコップの氷を大きめに音を立ててるんだけど・・・気付く気配が無い。
「よく分からんのは曇り。困らせたいんだろうが、雨までは降らないからそこまで困る人はいないんだ」
まだお尻が青い子供ならともかくもう高校生っすよ、お兄様。
どうしてお前というものはいつまでも成長しないんだか。
「最悪なのは雷雨とか台風だな。こいつらはどうしようもないぜ。困らせるどころじゃない、怖がらせて喜ぶ最低な奴らだ」
なぜか聞いているうちに少し興味が出てきて、話してあげる事にした。
・・・血は争えない、っていうのかな。こういうの。
「じゃあ雪も最悪じゃない。困る人結構いるから」
「いいや。雪は子供には優しい。雪を喜ばない子供なんて聞いたことないからな」
む、そうきたか。兄貴はくだらない話をしてるとホント、ガキみたいに笑うよね。
「天気は人生そのものを表している。世の中には色んな奴がいるからな、うまく付き合っていかなくちゃ」
こじつけもいいところだけど、悔しい。
悔しいけどさ・・・やっぱり兄貴の話はどうしようもなくくだらない。
くだらないけどさ・・・どうしようもなく面白い。私のツボからずれてない、いつも。
「しかし夏場の晴れは意地悪だな、暑くてかなわん。春先の雨も嫌な奴だ、じとじと長く降り続けるからな」
あー待って、痛い。お腹痛い。
私にとって兄貴はいつも照らしてくれる晴れなんだよ。
ホント、くだらない。
映画はどしゃ降りの雲一面の空が明るく照らされ始め、間もなく晴れになろうとしていた。
〜おしまい〜