あべ☆ちほ-8
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追記。
もちろんの話だが、千穂は助かった。
その後、僕は看護士に三十分弱にわたる説明半分説教半分の話をされたが、その内容を要約すると七文字で済む。
「セクハラするな」
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更に追記。
言い訳として、バトルロワイヤルは文章上殺戮実験として書かれたのではない、ということをここに記しておく。
けれど、悪趣味でないか、という点については僕は黙するのみだ。
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「今までに恋を発症したことは?」
「発症?」
「そう。発症。ない?」
「ない、……と思うけど」
時子さんのことを話す。
高校に入ってからの僕はありていに言ってクズだった。
遅刻は当たり前で授業はサボり、部活動には所属せず、且つありとあらゆる文化部に知り合いをつくっておいて放課後はどこかしらの部室でだらだらと時間をすごしていた。
それ以外にも図書室で「BATTLE ROYALE」を読んでしかめっ面をしたりしていた、という目撃談もある。
さて。
幸いなことにこの学校は全体的に部活に力を入れてなかったし、不真面目な部員も多かった。漫画喫茶として機能している文芸部やゲームの対戦相手をいつも探している放送部、いつも菓子を食べてる書道部に好きなCDをかけるだけの軽音楽部。
そして科学部。
科学部は全20名となかなか大世帯の部活であり、且つその20名中19名が幽霊部員という恐るべき記録を保持している部活だった。
その残った1名の部員を時子さんと言う。時子さんは有名人である。だらしなく伸ばした長い黒髪に制服の上から羽織った薄汚れた白衣でふらふらと歩き、ぼそぼそと喋った。まるで幽霊みたいに。そういう意味では20名全員幽霊部員だったと言ってもいいかもしれない。
けれど時子さんは自分のことをなんと言われても全然気にしないし、幽霊も信じない。彼女はただ独り部室で黙々とトンでもな発明品を開発していた。