あべ☆ちほ-21
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「眠り姫ってさ」
「茨姫のこと?」
「そう、それ。魔女の呪いで百年の眠りについちゃうお姫様」
「王子様のキスで目を覚ますって、まあ古来ゆえの陳腐なラブストーリィだね」
「あれさ」
「うん」
「お姫様は悔しかったと思うよ」
「悔しい?」
「うん。やっぱさ、救われるだけってのはかっこ悪いなって思うと思うんだよ」
「そうかなぁ?」
「被害にあってあいっぱなしってのは誰だって悔しいよ。仕返しできたらいいんだろうけどそれすらも封じられちゃうわけだし」
「まあ、女の子の君が言うんだからそうなのかもしんないけど」
「………………」
「千穂?」
「………………」
クリスマスデート以降、千穂はとにかく寝るようになった。とにかく突然眠りにつく。そして二、三日は起きない。
それは眠り姫としては悔しいものであるらしい。
まあキスで起きるかどうか、僕は試してないんだけども。
「…ちぇ。やんないのか」
「信じられない。狸寝入りしてやがった。こんにゃろう」
「………ん、ゃう」
そして、もちろん目覚めのキスは起きてるときじゃ意味はないわけだけども。