双子の姉妹。 10-1
「ん……むぅ」
目覚ましのベルに安眠をかき乱されて朝だということに気が付くと、寝返りをうちながら不機嫌に時計を叩いた。
「……あー」
そうだ、大学行かなきゃ。
着替えながらふと昨日のことを考える。
…何もしてないな。
いや、あれから毎日何もしていないんだ。
俺は双子の姉妹の受験が終わってから、一度もあの家に顔を出していなかった。
何度もおばさんや姉妹から電話があったが、それでも理由をつけて行くことはしなかった。
あれから新しいバイト先を探して、コンビニを少しだけやったが全然続かなかった。
貯金もそうあるわけでもなく、夕食も自分でするものだから最近の生活はかなりギリギリ。
俺の生きがいは、あの双子の姉妹に勉強を教えることだったんだ。
だから、悩むことなく家庭教師の契約もあのあと切ってしまった。
きっと同じような熱意を出すことは難しいから。
それにやっぱり、ずるくても俺は二人が好きだったんだと思う。
「やべ、急がねーと」
俺は荷物をまとめると、慌ただしくアパートを飛び出した。