双子の姉妹。 10-3
「お…お前らっ!」
「えへへー会いたかったよせんせ!」
「ばか俊哉!寂しかったんだから!」
向き合ったところで再び飛びついてくる二人。
「離せ!」
「あはは!えーい!」
「嫌よ!絶対離れない!」
何だか以前より強烈になっているのは気のせいだろうか。
「…何でだよ!今さら…」
「それはこっちの台詞よ!ずっと家に来ないで!」
「行けるわけねーだろ!」
なんだか路上でちょっとした騒ぎになってしまった。
通行人もこちらを見ている。
「せんせ、あたし達、話し合ったの。どうすればまた前みたいに戻れるかって」
「…戻れねーよ!」
ずっとそのつもりだったんだから。
「それでね、せんせが戻れないなら、あたし達が進むことにしましたー!」
琴音が笑う。
どうせ知恵を貸したのはおばさんだろうが、そんなの無茶苦茶だ。
「ふざけるな!俺の決心は揺らがない!何より、前半で真面目に語ったのが無意味になるし恥ずかしいことになる!」
「前半ってなによ」
「香織!助けてくれよ!」
香織に救いの手を伸ばす。
「…知らないわよ。やっぱムカつく!」
香織は怒って先に行ってしまった。
「……観念した?」
麻琴が胸を張る。
「……」
「何も言わないのは了承ってことね。じゃあ今日から毎晩、ご飯食べに来るのよ」
「そうそう!お母さんもあたし達も、それが一番なんだから!」
二人はそう言って、俺の手をそれぞれ握った。
合格発表の日のように。
「さあ大学だー!せんせ、しっかり案内してよね!」
「とりあえず俊哉が卒業するまではずっと一緒なんだから!」
「……なんだったんだ、俺の気持ちの整理は…」
こうして、今まで通りの生活は突然戻ってきた。
だが結局、みんながこの状態を望んでいたのだろう。
やっぱり、俺だって心の底ではそうだったんだから。
そして、俺達の恋愛は、振り出しに戻ったのか、それともまた別のものとなるのか。
全くわからないけど、再びこれからも双子の姉妹に振り回される生活が始まったのだった。
「せんせ、大好きー!」
「…俊哉、好きだからね」
「あれ、やっぱり振り出しじゃないか?」
end