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中野望のセイタイ実験
【コメディ 官能小説】

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中野望のセイタイ実験-6

「おい、聞いたかよ望! マジで止めてやれって!」
『………』
この理科室のどこかにあるマイクに向かって声を張り上げる祐樹であったが、スピーカーから望の応答はない。
「ち……もう、いい。100万だろ? 俺が払う」
藍子に背を向けたまま、祐樹は言った。
「ちょ、ちょっと……祐樹!」
「お前、止めんなよ。金と自分の処女とどっちが大事なのか考えてみろ。俺、これ以上この場にいたらお前に何するか分からないからな」
「どっち、て……」
そんなことを言われても困る。
確かに初めては大切にしたいが、だからといってここで100万を払うのは腑に落ちない。
「お前の50万くらい、俺が払っておいてやるよ。後から返してくれりゃいーから」
「――バカ!」

出口に向かおうとする祐樹の背に縋りつくようにして、藍子は彼を止めた。
「あたしのために、お金出す必要なんて、ないでしょ……!」
「おま……藍子」
祐樹の背に抱きつく藍子の耳は真っ赤だ。
「別に、あたしは……」
「おい、藍子」
何とか絞り出すようにして言う藍子に、祐樹は言った。
「?」
「当たってんだよ、胸……」
そう言う祐樹の顔もまた赤い。
小さくない藍子の胸の感触が背中から消え、祐樹は小さく息をついた。
「ご、ごめ……っ」
慌てて離れ謝る彼女に、祐樹は背を向いたまま黙り込む。
「………」
「………」
沈黙を破ったのは、今度も祐樹だった。
「藍子」
「な、何」
「お前が本当に嫌なら、俺はマジで100万払ってこの実験を止めさせる。けど……」
言葉の続きは、唾を飲み込んでから。
「けど、お前が嫌じゃないと思うなら、その……俺と……」
「あんたと……」
その続きは言わなくても分かっている。
藍子は祐樹の大きな背を見つめ、それから俯いてぼそりと言った。
「……あんたは、嫌じゃないの」
「何が」
「あたしと、エッチするのって……」
そこまで言った藍子に、祐樹は振り向くと同時に笑って言った。

「バカじゃねーの」
「な……」
「正直、幼馴染で腐れ縁だし、お前のことを女とも思ってなかったよ」
がしがしと頭を掻き、祐樹は藍子からは顔を逸らして大きく息をつく。
「それなのに、お前に彼氏ができたって聞いた時、ちょっと嫉妬した。別れたって聞いた時は嬉しかったし、さっきお前が処女って分かった時、ほっとしたんだ」
「それは、別にお前のことが好きだったからっていうよりは、単純に昔からつるんでたお前を彼氏に取られたみたいで嫌だっただけ――そう思ってた」
言いながら、藍子に視線を向けた。
「だけど、今思うとやっぱりマジに嫉妬だったのかも」
大きな手のひらが藍子の頬に触れる。
近付く顔と顔。
「お前のこんな顔、他の男が見てるって考えると――ムカつく」
「ん……っ」
唐突に唇を吸われ、藍子の肩がびくりと跳ねた。
それでも彼を拒絶しないのは、"イエス"の合図。
唇を離し、祐樹は熱っぽく上ずった声で訊いた。
「いいよな? ――……ん!」
いいよ、の代わりに藍子からのキス。
馴れない口付けの拙さは、逆に祐樹を燃え上がらせる。
祐樹の指は黒いセミロングを梳き、唇は夢中で柔らかな唇を食んだ。


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