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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十八話-1

第十八話 雪ノ下祭前夜


…眠れない。

明日はいよいよ雪の下祭の日だ。
藤本さんから今日の夕方電話があった。
明日は夕方だと混んでいて会うのが大変だから、
お昼過ぎくらいに店にきてくれとの事だった。

そろそろ寝ないと昼までに起きれない。
自分でまるで遠足前の小学生かと突っ込みをいれたくなる。

草士さん、ちゃんと覚えててくれたんだ―。

二人でご飯を食べに行ったきり、彼とは会っていない。
彼は携帯を持っていないから気軽に連絡も出来ないし、かと言ってお店にかける
程の用事もなかった。

明日、何を着ていこう。
また甘いものでも買っていこうか―。

そんなことをさっきからずっと考えていると、
あっという間に時間が過ぎていった。

明日、彼に会えるんだ―。

そう思うと、また緊張してきて眠れない。

明日はどんな着物なのかな。

毎回素敵な着物を着ているから、見るのが楽しみになっている。
若い人が着物を着ている、ましてや男の人が着ているのは珍しいと思う。
しかも彼の場合は、しっくり似合っているから素敵だと思う。

彼に出会ってまだ間もないけれど、会うたびに新しい発見や驚きがある。

最近は彼に影響されてか、着物の人を見かけると自然に目が追うようになっている。
それに、着物の絵柄も気になって見てしまう事が多くなった。
絵柄が知っている季節の花や景色等だと、彼の着ている着物を思い出す。

あまり意識していなかったけど、花や草など、都会でもささやかながら自然がある。
ちゃんと季節を感じて生きるということはとても素敵な事だと思う。

日本人なのに、四季を感じず忙しく生きている自分が、少し恥ずかしくなった。
きっと、まだまだ見落としている事が沢山あるのかもしれない。

仕事が忙しい事が生活が充実している事だと思っていたが、
たまにはゆっくり自然を感じたり、自分を振り返らないといけないんだなと
彼といると考えさせられる。

色鮮やかな着物の柄や、最近目にした花や草木を想像していると、
何処かから、やっと眠気がやってきた。


桜の花びらが髪の毛に落ちて、
それを誰かが優しくとってくれるような、
ゆらゆらと白くやわらかい光の中にいるような夢を見た。

その花びらをとってくれたのが、
また彼だと良いと
私は夢の中で思った。


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