双子の姉妹。 9-7
「…俊哉くん」
「二人が俺のことを好きになってくれたのはうれしい。でも俺は、いくら考えても二人のどちらかを選ぶことはできなかった」
「俊哉…」
「俺はこの家族が好きだ。だから、この前みたいに俺のことで二人が喧嘩するところは見たくないし、この幸せな家庭を壊したくない。どちらかが辛い思いをして昔の俺のような目に遭わせたくないんだ」
「せんせ…」
「…二人の合格が決まってすぐ言うのも躊躇ったけど、今言わないとだめだと思った。雰囲気をぶち壊しにして本当にごめん…」
俺の気持ちは、すべて言葉にして吐き出した。
空気が読めないのもわかってる。
でも、これから後に言うタイミングなんてないだろ…
しばらく四人は黙っていたが、やがておばさんが口を開いた。
「麻琴、琴音、わかった?」
「わからないよ…」
少しして、琴音が泣きそうな顔で言った。
「わからないけど…!私はせんせが辛い思いをするのが一番嫌だから…わからないとね」
「琴音…」
「……ふん!まあチキンな俊哉だから、そうなるだろうと思ってたわよ!」
麻琴の声は、震えていた。
「でも、別にあたしや琴音のことが嫌いだから付き合えないってわけじゃないなら、しょうがないから許してあげるわ!」
「麻琴…」
「…俊哉くん、心配しなくても、私たちは俊哉くんの家族だから。ずっと私たちは味方だからね」
おばさんのその言葉を聞いた瞬間、涙が止まらなくなった。
俺の帰る場所は…家族はここにあるんだ。
「…本日をもって、俺の、家庭教師としての仕事はこれで終わりです…今までありがとうございました!」
俺は三人に向かって頭を下げていた。
「ばか!重っくるしいのよ!」
突然、麻琴に背中を叩かれた。
「え」
「ほら、せんせ、ご馳走だよ」
琴音はテーブルに駆けていく。
「いや、ここは感動して泣くところだろ…」
「ほら俊哉くんも!おばさんケーキの続きやるから早く食べちゃって」
「……あの」
この家族は、いつもどおりだった。
なんだか納得がいかないが、こうして俺の長いようで短かった家庭教師生活は、ハッピーエンドとは少し違うのだけどようやく終焉を迎えた。
…はずだった?