4YOU-1
夜中0時すぎ。
バイトから帰って来たばかりの部屋の中で、着信音が鳴った。
ポケットの中から携帯を取り出す。
画面に表示された名前を見た瞬間、俺を取り巻く時間が…またあの頃に戻る感じがした。
「もしもし?」
『やほ〜』
「どしたん?」
『や、別に。どうしてるかなって思って』
そう、こいつはこんな風にたまに電話をかけてくる。
あの頃から変わらない、のんびりとした穏やかな時間。
俺はベットの上に転がった。
「相変わらずやで。お前は元気にしてるん?」
『うん、普通に』
「で、また何かあったんか?」
『何もないで?』
嘘だ。
こいつが電話をかけてくるのは何かあったとき。
まぁ、頼られている証拠だと思っておこう。
半ば強引に話を聞き出してみると、やっぱり恋愛話。
一通り話を聞き、俺なりのアドバイスをしてやると、こいつは茶化すようにこんなことを言う。
『先輩、大人になったね』
「はぁ?俺は昔からお前より大人や」
『え〜。昔はただの純情少年やったやん』
「うるさい、アホ。俺もいろいろあったねん」
ケタケタと笑いながら『そっか』と短く返答する。
この笑い方も、話し方も、言い返しも、全てが懐かしい。
人からよく相談をされるが、こいつに関しては一番親身になっている気がする。
他人事と思えないというか…危なっかしくて心配なんだ。
『四年分の絆やね』
おかしそうに笑いながら電話の向こうの声はそう言う。
それと共に聴いたことのある洋楽が聞こえてくる。
こいつはいつも洋楽をBGMに電話をする。