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【家族 その他小説】

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-1

流れる風が涼しくて気持ちがいい。

今日はまだ夏休みまで少しあって、朝から学校に行くのがめんどくさかった。

(だったら前借りしちゃおう、夏休みの前借り!)

容赦なくお日さまに炙られた自転車のサドルにお尻を乗せた瞬間、思い立った。
いつも通る道に背を向けて走りだす瞬間のこの快感、病みつきになっちゃう。
さぼりっていうのは何回やってもやめられない。

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜」

暑いのであまり走らず、いつもは通らない土手の上に自転車を停めた。
草むらに足を投げ出して寝転がり、ぎらぎら照りつけるお日さまから目を隠した。
指と指の間が赤くなって、それを見てるうちにふと弟の顔が浮かんだ。
(手をお日さまにかざせば、なんて歌あったっけ。弟がちっちゃいころよく歌ってあげたな)
歳が離れた兄弟は仲良くなるって先輩が言ってたけど、その通りだと思う。
来年高2になる私と、今年でようやく歳が二桁になった弟。
ずっと弟が欲しくて、欲しくて、やっと生まれてきてくれた。
友達に話したら鼻で笑われる様な話でも、弟は無邪気にお腹を抱えて笑ってくれる。
私にいつも元気をくれるとってもかわいい弟・・・

「姉ちゃんみっけ!」
「ひっ、浩之?!」

目を隠してた手をどけたら、弟が悪戯っぽく笑いながら私を見下ろしていた。

「ひとみお姉ちゃんみっけ!さぼりださぼりだぁ!」

あ〜〜・・・やばいとこ見られたなぁ。いつもなら会えて嬉しいんだけど、今はちょっとまずいかも。

「・・・ちょっと待って。なんで浩之もここにいるの」
「おれ?えへへへ、おれも学校さぼっちゃった」

歯を見せて、真っ黒に焼けた顔をくしゃくしゃにしながら、腰に手を当て得意げに立っている。

「悪い子ね浩之」
「姉ちゃんもだろ。おまけに髪の毛茶色いし!こーこーでびゅーだ!こーこーでびゅー!」

まったく、言ってくれちゃって。光に透かさないと分からないくらいなのに。
お父さんと私が話してるのを聞いて覚えたのね、その単語。使いたくてしょうがないんだ。

「姉ちゃんの方が悪い子だよ。こーこーせいで学校さぼるから」
「そう、お姉ちゃんは悪い子よ。だからこんな悪い子にはアイスなんか買ってもらいたくないよね?」

それを聞いて急に泣きそうな顔になり、私の腕にしがみついてきた。
ふふ・・・やっぱりまだまだ子供なのね、浩之ってば。

「ごめんなさい姉ちゃん。もう生意気なこと言わないからアイス買って」
「やだ。浩之がお姉ちゃんに意地悪したから買ってあげないもーん」
「姉ちゃぁあん、お願い」

・・・たかがアイスでそこまで必死になるかな。

ソーダのアイスを仲良くかじりながら、照りつける日射しの下を並んで歩く。


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