双子の姉妹。 8-9
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のろのろと階段を上がり、麻琴の部屋にノックせず入った。
「んぅおあ!!」
思わず声を上げて仰け反る。
なんせ部屋には今まで隠していたであろう大量のぬいぐるみがあった。
「大きな声出さないで!お母さん起きちゃうから!」
麻琴が小声でそう言った。
「……びびるだろこれ」
つい三時間くらい前にはなかったものがあるんだから。
「……驚いたでしょ」
「……まあ」
改めて見ると数は予想以上に多い。
「あたし、俊哉に隠してたんだけどさ、ぬいぐるみ集めが趣味なの」
…衝撃の事実。
ってことに普通はなるんだろうが、俺は知っていた。
「…へぇ」
「なんていうか、恥ずかしいんだけどぬいぐるみに囲まれてないと落ち着かないんだ」
「……」
「俊哉にばれて馬鹿にされるのが恥ずかしくて、いつもは隠してたの」
だからどこにだよ!!と言いたい衝動を必死でこらえた。
まあ、その次に思ったことを言うか。
「……馬鹿にしねーよ」
「え?」
「そりゃ誰だって趣味はあるし、俺にだってお前や琴音に黙ってる趣味なんていっぱいある。それに女の子らしくていいじゃねーか」
「…俊哉」
「もっと早く言えばよかったのに。こいつらに囲まれてたほうが勉強も集中できるんだろ?」
麻琴は馬鹿にされるとばかり思っていたのか、俺の言葉にひどく驚いていた。
「……ありがと」
そして、麻琴は笑った。
いつものつんけんした態度ではなく、柔らかに。
「…それとね、ちゃんと言う。俊哉、あたし俊哉が好きです。ずっとずっと前から」
「……麻琴」
それは言葉にすると、とても重く深い。
「今までそんな素振りを見せなかったかもしれないけど、本気だから」
わかってるよ、麻琴。
「あたしと付き合ってほしい。結論が出るまでずっと待ってるから」
やっぱり知ってたみたいだな、琴音の告白のことも。
「わかった、ありがとう麻琴」
「んーん」
麻琴の顔は、また真っ赤だった。
「じゃあ、戻るな」
そう言って踵を返したときだった。
「俊哉!待ちなさい!」
その言葉に驚いて再び振り返った。
正直、不意打ちでキスされるんじゃないかと思った。
だが、そうじゃなかった。