双子の姉妹。 8-7
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自宅から持ってきたスウェットを着てリビングへ。
「おばさん、ありがとうございました。気持ちよかったです」
「……ドキドキした?」
「しませんよ」
おばさんから発せられた言葉は、丸々予想通りの言葉だった。
「じゃあおばさんも俊哉くんが入った後のお風呂に行ってきます」
「何を意味ありげに言ってるんですか」
おばさんは妙なテンションでバスルームへと向かった。
「麻琴は…部屋か」
二階に上がり、麻琴の部屋のドアをノックした。
「麻琴、入るぞ」
「ちょ!ちょっと待って!」
…ぬいぐるみか?
だとしたら、今わざわざ出さなくてもいいと思うのだが。
俺が部屋に来ることわかってるのに。
「も…もういいわよー」
ドアの向こうのくぐもった声を聞いてから部屋に入る。
うん、隠してあるな。
「何時からやる?少しは休みたいだろう?」
「…俊哉が帰ってから戻ってお風呂入ってる間まで休んでたから何時からでもいいわよ」
「…本当にやる気出したんだな」
俺は苦笑いしながらベッドに座る。
相変わらずふかふかだ。
「風呂入ったら眠くなってきた…このまま寝ようかなー」
俺はそう言ってゴロンと横になる。
ん…いい匂いだ…
「なに言ってるのよ…いちおう合宿でしょ」
麻琴は勉強机から立つと、俺の横に同じようにゴロンと寝転がってきた。
すると、それと同時にいい匂いが一気に強くなる。
麻琴も風呂に入ったばかりだからか?
「…ねえ、俊哉」
麻琴は俺を見ず、天井を見たまま言った。
「んー」
「今日、一緒に寝る?」
「なに言ってんだよ」
「だって、遅くまで勉強するんでしょ?」
「ばか、そんなに遅くまでやんねーよ。ちょっと長いだけ」
「…それって俊哉が泊まってまでやる意味あるの?」
「さあな、おばさんが言い出したことだし。たぶん面白がって」
「……確かにそうだけど、たぶん、あたしは意味あると思う。普通、ここまでしてくれる家庭教師っていないと思うから」
「…そうか?」
「うん。前に言ったよね。俊哉に喜んでほしいから、勉強頑張るって」
「…そうだったな」
その言葉を聞いて思い出した。
俺、今日麻琴に告白されたんだ。たぶん。
「今も変わらないよ。この間はやけになってあんなこと言っちゃったけど」
受からなくてもいい、ってやつか。
「俊哉」
麻琴は俺の名前を呼ぶと、転がって俺の胸元にくっついた。
「……ん?」
「……いや、やっぱりいいや」
「なんだそりゃ」
「あはは」
「…よし、やるか」
俺は起き上がって大きく伸びをした。
麻琴と勉強以外で二人きりになるのも、勉強以外の話をするのも珍しいことだ。
なんだかすごく、心地よかった。