新人-9
「そんなカナちゃんをオカシイとかよく言えるな。お前がそんな奴だと思わなかったよ、失望だ」
あんなに優しかったのに。私のことよく分かってくれてたのに。
藤…。
「俺、もうお前とは無理だ。カナちゃんのこと好きなんだよ、じゃあな」
カナを好き…?
私、振られた…?
藤が遠くなる。
カナのこと信じちゃうの?
私のこと信じてくれないの?
カナのこと好きなの?
私のこと嫌いになったの?
藤…。
大好きだったのに。
それもこれも全部全部カナのせい。
カナがいなければ。
カナが藤を誑し込んだから。
サキも信用も藤も。
私の大事なもの全部奪われた。
カナ―。
…カナァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
マンションのチャイムを鳴らすとカナが顔を出した。
「先輩!来ると思ってましたよ♪」
嘘臭い笑顔。
「どうぞ!」
カナの匂いがする。
気持ち悪い。
「お茶出しますねぇ」
「いらない。話があるの」
「お話?」
いらないと言ったはずなのに、カナはコップにお茶を注ぎ始めた。
「何の話ですかー」
「分かってんでしょ?」
「んー…何かなぁ」
お盆に二つ、コップを乗せてカナは近寄ってくる。
「カナのことかなぁ。今日のことかなぁ。それとも藤さんのことかなぁ」
ニッコリと笑ってカナは私の向かい側に立つ。
「どうぞ。烏龍茶ですけど。座って下さい」
「お茶飲みながら座って話すほど楽しい話じゃないの」
「ふふ、だから何の話ですかぁ?」
分かってしまった。何もかも。
後は答え合わせだけだ。
「あんた、私と同じ高校で同じ部活だったでしょ。夏菜」
夏菜は更にニタッと笑った。
「アハハハ!私のこと知ってくれてたんですか?どこで気付きました?」
「何であんたが私にこんなことするのか、考えたの。そしたら思い出した。夏菜って名前の後輩」
「へーえ。嬉しい」
夏菜はダイニングテーブルに座って満足そうに笑っていた。