投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

新人
【その他 その他小説】

新人の最初へ 新人 1 新人 3 新人の最後へ

新人-2

「先生には『地味なカナ』『派手なカナ』って言われるし、もう一人のカナが先輩たちの評判めちゃくちゃ悪くて、『あんたがバド部のカナだよね』とか間違えられたりするし…」

バド部…。私も高校生の頃はバドミントン部に所属していた。
すごく楽しかったし、人数が多くて全員と仲良くはなれなかったが、部活メイトにも恵まれたと思う。
周りにも結構期待されて、自慢じゃないけどなかなかイイ線まで行っていた。
美容師の夢が無かったら今でもバドをやっていたと思う。
久しくやっていなかったから何だか懐かしくなったし、カナとの共通点が見つかって嬉しかった。

「カナちゃん、バドやってたんだ。今でもやってるの?」

「いえ、全然。でも、社会人て運動不足になるじゃないですかぁ。だから、カナ趣味で始めたいと思ってるんですよねぇ」

確かに私自身ここ数年は体を動かしていない。

「そうだね、私も何かやろうかな」

「だったら、一緒にバドやりません!?バドだったらウェアだけ買えばすぐ出来るし。そーだ!先輩、今度一緒にウェア買いに行きましょう!」

私は部屋の片隅にある埃まみれのラケットを思い出した。
捨てなくて良かった。だけど、少し手入れしとかないといけないな。

「うん!」

私が頷いてみせると、カナは「楽しみーっ!」と嬉しそうに私に抱きついた。
いきなりで少し驚いたが、はしゃぐカナを見て私も嬉しくなった。
私たちは買い物の日取りを決め、その日はあれをしようこれをしようなど言い合い、チーフの「あんた達いつまでタオル洗ってんのっ!?」という怒声が飛んでくるまで洗濯機の前で話していた。





その次の週の月曜日。
私たちは駅で待ち合わせをして、早速ウェアを買いに行った。
それぞれお気に入りのデザインの物を買い、ラケットの話や試合の話をした。
カナは本当に明るく元気な子で、こちらまで笑顔になれる。
カナが新人として入ってきてまだ少ししか経ってないのに、昔から知り合いのようなそんな気分になる。
二歳の歳の差も感じないし。
それに、こんなに可愛い子と一緒に歩けているのも自慢だった。
しゃべり疲れて喉が渇いたので、すぐ近くにあったコーヒーショップに入り、私はチョコレートとミルクのラテを頼んで席に座った。

「先輩は藤さんと長いんですか?」

「ブッ…藤と?」

カナが唐突に口を開いたので、私は吹き出してしまった。

「もぉ先輩、大丈夫ですか?で、どうなんですか?」

「い、いや、そんなに…。半年ぐらい」

私は口を拭きながら答えた。
藤と私は先も述べたようにたった二人きりの同期で、相談事なんかもしてきた仲だ。
元々友達の期間が長かったせいか、付き合うことになっても私たちの関係はあまり変わらなかった。

「ふーん、二人とも落ち着いてるから長いのかと思いました」

「恋人だけど同期で仲間で大切なスタッフだから」

だから二人とも名字で呼ぶ癖が抜けない。


新人の最初へ 新人 1 新人 3 新人の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前