レンアイ☆ルーキー!〜恋の新人〜-1
夜中に、突然目が覚めた。
いや、実際には眠ってはいなかったから、意識が浮上して覚醒した、という感じか。
うつらうつらと考え事をしていたら、突然、天啓を得たかのような覚醒をしたのだ。
多香子は、中学2年生。
その日、木曜の午後は、一週間で唯一、授業で部活を取り入れられている時間帯だった。
皆どこかに強制入部させられるので、その間は全校が部活中になる。
もちろんその中には、朝練や木曜の午後はそのまま続く放連もある、ガッツリ系の部もあれば、帰宅部代わりの在籍専用の部もある。
多香子が入っているのは後者だ。
なかには受験を見据えて、という生徒もいるが、多香子はただ、ラクそうだから、だった。
そのうち、多香子がいるのは「文芸部」。
運動よりは読書が好き、という若干夢見がちで人見知りな少女である。
文芸部では、毎週数人が授業の始めに発表をする。
本の感想だったり、書いた詩だったり、何も思い付かなければ絵本の朗読だったりした。
その日は、中1の男子4人の番だった。
すでに11月になるが、4月に3年生から始まった発表は、やっと今になって彼らに廻ってきた。
前の3人は友達同士で入部し、なんともチャラいことに(と、少なくとも多香子は思っていた)、彼らはバンド活動の為の作詞をしていた。
この中学校には、軽音部は無い。
とは言え、作詞も文学のうち、と割り切るのは難しかった。
だから多香子は、緊張しているのか声が震えたり、更にはふざけ半分で発表を終えた3人の後から前へ出た、落ち着いた話し方をする最後の1人には、普段から好感を持っていた。