続・危険なお留守番・女子大生由真-9
「――――見てたの?」
「見てようが見てまいが関係ねぇだろ」
「悪趣味よ」
「なんだと?!」
自分でも愚かな嫉妬心だとわかっていたが、止められなかった。
和也は、由真の腕をつかんで壁に身体を押し付けた。
「……やっ…やめて……」
麦茶の入ったグラスがじゅうたんの上にゴトンと転がって、放射線状のしみを作る。
「……痛いよ……」
「―――付き合ってんのか。アイツと」
こうして真正面から由真の顔を見たのは2年前のあの日以来かもしれない。
くっきりとした二重瞼を優美に縁取るアイライン。
マスカラを塗った黒目がちな大きな目が、動揺して左右に揺れている。
まだまだ幼いと思っていたのに、いつの間にこんな化粧をおぼえたのだろう。
「お兄ちゃんには……関係ないじゃん……離してよっ……」
いやいやをしながらもがいた拍子に、緩いパーマをかけた柔らかい髪が、ふわりと和也の鼻先を掠めた。
――不自然な湿り気の残る毛先。
まるでたった今シャワーを浴びたてきたばかりのような、強いシャンプーの香りが和也の鼻腔を刺激した。
「お前………」
頭に完全に血が上って、声が震えているのが自分でもわかる。
「あいつと……ホテルにいたんだろ」
「……ち…違うよ……」
気まずそうに唇を噛んで視線をそらす由真。
小さい時からずっと一緒にいたから、由真が嘘をつく時の癖を和也は十分すぎるくらい知っている。
和也の一番気にいっていたプラモデルをうっかり壊してしまった時も、由真はやっぱりこんな顔をしていた。