続・危険なお留守番・女子大生由真-3
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「……由真をおいてかないで……か……」
車窓から見えるライトアップされた桜並木を眺めながら、和也はぼんやり浮かんできた懐かしい風景にふっと苦笑いを浮かべた。
平日ということもあって、終電はガラガラだった。
重い足どりで降り立ったホームにも人影はまばらで、吹き抜けていく乾いた春風がひどく物寂しい。
4回生になってからほぼ毎週の就職活動で、疲れがかなりたまっていた。
着慣れないスーツと履きなれない革靴。
この不景気でどの企業も新規雇用には消極的で、就活をすればするほど未来に希望が持てなくなるような気がした。
「……頭…痛ぇなぁ……」
今日は慣れない一人酒など飲んだせいで、少し悪酔いしてしまったらしい。
駅から家までの坂道が、いつもより急勾配に感じられた。
「……由真……もう寝てるかな……」
時刻は午前1時半を回ったところだった。
外から恐る恐る見上げると、由真の部屋は既に電気が消えている。
『――なんとか顔を合わさずにすんだか―――』
和也はホッとため息をついた。
今朝から両親が二人揃ってハワイ旅行に出掛けているのだ。
子供が二人とも無事大学に入学したら夫婦で必ず行こうと、ずっと前から資金を積立していたのだという。
5日間もこの家で由真と二人きりになるのは、正直精神的にかなりキツいと思った。
しかし自分たちは、今までこれといって親孝行らしいことは何も出来ていない。
夢だった夫婦旅行ぐらいは快く行かせてやるべきだろうと和也は腹を決めたのだ。
「あの日」から2年の月日が過ぎていた――――。