続・危険なお留守番・女子大生由真-2
「……しょうがないだろ…泣いたって……無理なもんは無理なんだよっ!」
すがりつくような視線で見上げてくる由真に背を向け、和也は学校に向かって足早に歩き出した。
胸の奥が針で刺したようにちくちく痛む。
「――由真ももうすぐ行けるよ―――今日はいい子で待っててね」
母親が由真を優しくなだめる声が聞こえてきた。
その甘やかすような口調がますますしゃくにさわる。
せっかくの晴れの日が由真の涙で台なしになってしまったみたいで、腹立たしかった。
「由真をおいてかないでぇっ!………お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
後ろ髪をひく悲しげな声に、和也の胸はどんどんしぼんでいく。
『なんだよ……由真の駄々っ子!―――だいたい母さんは由真に甘すぎるんだ――』
思いっきり蹴っ飛ばした小石が、大きな桜の幹にコーンと当たって跳ね返り、土手の下に転がり落ちていった―――。