生徒会へようこそ【MISSION'1'自己紹介を円滑に遂行せよ!】-10
第4多目的室のドアをガラリと開けた直後、宝さんは勢い良く頭を下げた。
「取り乱してすみませんでしたぁっ!」
僕も後ろで少し頭を下げてみた。
「…寿絵瑠ちゃーん!」
小鞠先輩が飛んできて宝さんに抱き付いた。
「もう戻ってこないかと思ったよぉ〜っ!良かった〜っ!」
トップオブ生徒とトップオブ女子が抱き合ってる。
おいしい…。
なんてボーッとしていたらいきなり肩をたたかれてビクッとした。
「公彦先輩…」
「初仕事、お疲れ様」
「初仕事?」
「生徒委員会は生徒のための委員会だぞ」
「はあ…」
公彦先輩の口角が上がる。
「俺たちだって生徒だ」
「あ…はい!」
何だろう、この気持ち。
スッキリっていうかワクワクっていうか…。
とにかく嬉しかった。ものすごく嬉しかった。
今まで知らなかった感情だった。
「さて、そろそろ俺の自己紹介していいか?」
『オツ』って人が机の上に寝転がってつまらなそうにしていた。
鼻をほじるな、鼻を!
でも、きっと悪い人じゃない。
「はい」
「……はい」
宝さん、何つうテンションの低さ。
『オツ』って人は、ヨッコイショと起きあがるとホワイトボードいっぱいに名前を書いた。
『鯨岡 乙』
へー『オツ』ってあだ名じゃなかったんだ。
「鯨岡 乙だ!よろしく!」
「え?」
「え?」
「よろしくお願いします…」
「よろしくお願いします」
ふーん。『乙』で『きのと』っていうんだ、初耳。
てか、何で小鞠先輩と公彦先輩が「え?」なの?
「おい、待て待て。小鞠、キミ。何で今知ったみたいなリアクションすんだよ」
「今知ったからだ」
「オッくんて『きのと』ってゆーんだぁ!知らなかったぁ!」
ぇええ!?
「お前ら…殺ぉぉすっ!!」
「やーん、ごめぇん!だってオッくん、あたしに自己紹介する時名前書くだけ書いて言わないんだも〜ん!」
「オツって呼んでも否定しないしな」
先輩たち…テキトーだな。