春の戯れ-6
「紗英、かぁわい」
罵詈雑言、思いつく限りぶつけてやろうと思っても、火照った体に、可愛いと囁いて顔中降り注ぐように口付けてくる鶯には敵わない。
……だって目の色が吸い込まれて溶けそうなほど優しくて、ヘンに泣きたくなる。
愛しい愛しい。
見詰めてくる目が何より雄弁に物語ってくるから……許したくなっちゃう。
こんなに恥ずかしくて身が焼かれるのに。
ずるい、ずるいよ……。はるつぐ…。
「ふふ。紗英の顔可愛い。とろんてしてる」
「とりょん…?」
舌足らずに問うと鶯は嬉しそうに笑って頬に口づけた。
チュ、と軽く鳴るリップ音が、犯された耳とスイッチ全開の体にはなんだかつたなく幼い音で心地いい。
「うっとりってこと。気持ちいいんでしょ?」
にこにこ笑いながら、鶯は今度はバードキスを額に瞼に頬に唇に、……たくさん降らせてくる。
「ん……きも、ちぃー…」
「……あんまり可愛いこと言わないの。そういうとこも好きだけど」
あぁ…、もう。
真っ赤になったハルの方がかわいいじゃないか。
許したくなっちゃうだろうが…。
バカモノめ。
「もう…い、…から。ハルの好きにして?」
降参。白旗。負け、私の敗けです。
そう白旗をあげると鶯は肩に顔をうずめて小さく息を吐いた。
「反則だよ、ホント……」
「え?なに、聞こえな……んっ!」
何を呟いたかはぐらかされるように口づけられた。
唇を啄んで、食んで、舐めて……とろとろに溶かされるキス。