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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-2

「僕もいきたい!」

勢い良く出た言葉、カルサは少し驚いたようだったがすぐに冷静さを取り戻して短く応えた。

「好きにしろ。」

日向には問題がないから承認したという風にしか見えなかったが、カルサは内心穏やかではなかった。

オフカルスに行く事で記憶を取り戻してしまうのではないか。

「ありがとう、カルサさん。」

無邪気に笑う姿は昔と変わりはなかった。嬉しいような、歯痒いような。見ただけで分かる、日向の火の力は強くなり確実に自分の物にしていっている。それは望んでいた事なのだけれど。

「いや。」

それしか言えなかった。何を言っていいか分からない、失われた記憶に触れそうで恐い。

カルサは自分が引き金で記憶が戻るのを恐れ、今まで日向に近づかなかった。

「日向、食事にしましょう。皆待っています、顔を出してあげなさい。」

「分かった。ありがとう、テスタ。」

日向は重たく力のない体を気力でカバーして立ち上がった。態勢を崩しながらも歩き始める。

「マスター。」

「大丈夫、大丈夫!」

祷に心配をかけてしまった事が恥ずかしくて、照れ笑いをしながら答えた。楽しそうに会話をしながら扉に向かって歩く二人をカルサ達は最後まで見送った。

「似てきたと思いませんか?あなた方の父親に。」

二人きりになりつつあった部屋の中で問われた言葉。日向にテスタと呼ばれた青年は、銀色のような薄い水色のような色をした短い髪を揺らしてカルサに近付いた。

カルサは眉1つ動かさずに、そうだな。と答え、日向の後ろ姿を見送った。

「つまらない。一昔前の貴方なら食い付いてそんな事はないと取り乱したでしょうに。」

明らかにつまらなさそうに肩をすくめて上げてみせた。カルサは微笑み、確かにそうだと応える。

無駄に反発をして真実から目を逸らす程もう子供ではない。

「偉大なる守麗王でした、あなた方の父親は。」

遠い目をしながら互いに太古の時代へと思いを馳せる。まるで昨日の事のように鮮明に思い出せるあの時は眩しく輝いていた。

それもあの事件が起きるまで。

「過去の栄光だ。」

吐き捨てるように言ったつもりはない。それは紛れもない事実だから。

偉大なる守麗王だったという事にカルサも異論はなかった。確かに彼は自分にとって誇りだったから。でもそれは全て過去のこと。


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