光の風〈決意篇〉-13
「わ…るかった。」
口の中で言葉がこもってしまった。いつもと同じように怒られているはずなのに、様子が違う。そう頭の片隅で感じた瞬間、鈍い痛みが頭の先からつたって全身に走った。
千羅がゲンコツでカルサの頭を叩いたのだ。
「…っいってぇ!」
「これがお前の選んだ道なんだろう?」
頭を押さえたままのカルサに千羅は容赦なく言い放った。顔を上げてしっかり千羅と向き合う。
「戦うと決めたんじゃないのか?だったら記憶に縛られすぎじゃ何もできないぞ。」
厳しくも親身な言葉は何を指しているのかカルサには分かった。
戦場で今のように暴走したらどうなる?
そう言われた気がしていたから。千羅は正しい事を言っている。
国を出た時点で太古の自分に真っすぐ向き合う覚悟は決めていた。目を逸らさずに、この先何が起きても自分がやるべき事、やると決めた思いを貫く覚悟を決めていたのだ。幼い頃のトラウマに翻弄されている場合じゃない。
心が強いか弱いかなんて関係ない。振り切って前に進み、遣り遂げる事が大切だから。
「悪かった。」
こんなに容易く思いが揺らぐなんて情けない。あの太古の事件以来、ずっとこの使命を抱え共に生きてきた。それがどういう事か自分が一番よく理解しているはずだった。
「最終確認だ、カルサ。」
千羅の言葉に引き込まれるように顔を上げる。
「皆も来ているし、いい機会だ。」
視線を横にずらすと入り口付近にずらりと勢揃いしていた。貴未を先頭にマチェリラ、圭、瑛琳と日向がいた。
「お前がこれから何をしようとしているのか、何が目的か教えてくれ。」
千羅の眼差しはもちろん、そこにいる誰もがカルサを見ていた。カルサの言葉を黙って待っている。
カルサの視線は再び千羅とぶつかった。
「オレはヴィアルアイを倒しに彼のもとへ行く。そこで太古の因縁を全て晴らし新しい未来を作る。それが古えよりオレに与えられた使命だ。その使命をオレは全うする。」
強い眼差し。意志の強さは声に表れ力が伝わってきた。
「シードゥルサも必ず守ってみせる。リュナもレプリカとの約束どおり必ず救い出す。」
千羅は黙って小さく頷いた。
「守りたいものは3つある。シードゥルサと日向、これはオレの義務だ。そしてリュナ、これはオレの希望だ。」
突然現れた自分の名に日向は強く反応した。確かにカルサは今日向の名を口にした。しかも守る事が義務だと。
驚きを隠せない日向はただカルサを見つめるしかなかった。しかしカルサの視線は千羅に向けられたままだった。