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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-12

「千羅。」

「テスタ様、これは一体?」

巨大な力の放出、こんな力の使い方は戦闘以外ではしない。千羅は不安を隠せなかった。

「玲蘭華の話をしました。彼女はカリオ出身だと。」

「カリオ!?本当ですか!?」

引き金を聞いただけで千羅は大半を察した。今のカルサの気持ちも含まれるのだろう、千羅は唇を噛み締めた。

「きっと幼い頃のトラウマが甦ったのだと思います。」

テスタを支える腕に力が入る。トラウマ、そう呟いてテスタは何かに気付いたようだった。

腕の中、テスタが態勢を整えたのを感じ取ると、千羅はカルサに向かって歩きだした。ゆっくりと慎重に近づき、俯いたまま立ち尽くすカルサをそっと抱きしめた。

俯いていた顔が少し上を向いたのを肩で感じる。千羅よりも少し背の低いカルサは肩に顔を埋める形になっていた。

「カルサ。」

千羅の肩にカルサは頭を押しつける。光の波は静まり辺りは平穏を取り戻した。

「…悪い、取り乱した。」

「そうだな。」

カルサのため息が聞こえる。

「情けない。」

まるで小さな子供を抱きしめているようだ。

千羅は腕に少しだけ力をいれ、カルサとの距離を近付けた。

「そうか。」

そう応えた後、優しく背中を数回叩いた。大丈夫、そう伝えているのだろう。少なくともカルサにはそう言われているように感じていた。少しずつ気持ちが落ち着いていく。

千羅には腕の中でカルサがどれだけ傷ついた顔をしているかは安易に予想ができた。こんな時は強く思う、理不尽だと。

「もう大丈夫だ、千羅。」

千羅とカルサの距離が広がっていく。カルサの表情は厳しく、何を考えているのか千羅には分かっていた。

あれだけ傷ついても、冷静さを少しでも取り戻した瞬間に他人の事を思う。次に口にする事など明白だった。

「日向を守らないと。」

悔しくて溢れだしそうな感情を千羅は歯を食い縛ることで耐えてきた。しかしその制御は壊れてしまう。

「オレはお前のが大事だ!もっと自分を労れよ!」

思いの外強く出た言葉に本人も驚いてた。なかなかうまく届かない、届いたとしても変わるきっかけになれていない自分の無力さに腹が立つ。

千羅の態度に驚き、カルサの感情は白紙になってしまった。瞬きを重ねるたびに千羅の気持ちが溶け込んでくる。


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