光の風〈決意篇〉-11
「それでも納得しない奴がいるけどな。」
カルサから優しい言葉が零れた。それが誰を指しているのか分かったのだろう。テスタは頷き、そうですねと相づちをうった。
穏やかな表情ができたのはどれくらいか、カルサの表情は次第に感情を失っていった。それはテスタにも影響していく。
「運命と言ってしまえばそうなんだろうな。オレ達の歯車はどんなに姿形を変えたとしても行き着く先は結局同じだ。」
カルサの脳裏に刻まれた懐かしい記憶が浮かび上がる。
「歯車に関しての苦情は…それこそ玲蘭華にお願いします。彼女はカリオ出身ですから。」
カルサの時間がとまる。全ての音が無くなった一瞬、体中の細胞がざわめき始めた。
今、何て言った?
さりげない会話の中に未だ見たことの無い扉が開かれた。信じがたい内容にカルサは首を振る。
「カリオ出身ってどういう事だ?」
それを言葉にした時点で頭の中のパズルは確実にはまっていった。もしそうだとしたら納得がいく話が多い。
聖も紅奈も、そして日向も地球にいた理由。玲蘭華が地球にいたのなら頷ける話だった。
そして貴未と永の存在を知る理由も。
「貴方には伝わっていませんでしたか。時を司る神官・時生は彼女の後任なんです。」
太古の記憶が次から次へと急激に押し寄せて甦る。あまりの情報量、感情の波にカルサは頭を抱え、
叫んだ。
「ああああああっ!!!」
ドォオン!
突然の地鳴りのような衝撃に別室で待機していた千羅達は思わず立ち上がった。空気か地面か、何が揺れているのか分からないが巨大な力が均衡を震わせているのは確かだった。
咄嗟の判断でそれぞれが身を固くする中、千羅は一人走りだした。
「千羅!」
瑛琳が叫んだ時にはもう、彼の姿はなかった。全力で駆け出し、向かった先はカルサのいる場所。さっきまで日向の訓練場となっていた場所へ繋がる扉を勢い良く開けた。
「カルサ!!」
千羅の目に映った景色は部屋中が真っ白なものだった。しかしそれはカルサの生み出した光の波、台風のようにカルサを中心に雲のような光が次々と生まれていった。
その勢いは止まらず、テスタも次第に押され始めている。耐え切れずに態勢を崩した瞬間、千羅の腕が彼の背中を支えた。