不毛な関係-7
あいつらが一番悪いけど、純也も悪いのよ。
あんなところの毛を剃りたがったりしなければ、私だってもしかしたら自分の陰毛かも知れない…
そう思えたに違いないんだから。
それに何なのよ、あの無責任さ…
あんなヤツともう二度と寝てやらないんだから…
そんな事でまた軽く混乱に陥ってしまったけれど…
日暮れには普通に純也と一緒に退社した。
そこへあの井上が待ち構えていたのだ。
[ あっ…ちょっといいかな? ]
井上は私を見て呼びとめた。
純也と一緒だったけど、私は自転車を停めて井上に向き直った。
[ なあに? ]
[ あのさ…今朝…
何かいいかけたよね? ]
私はしばらく井上の顔を眺めてからこう言った。
[ もう…いいのよ。
何だったか忘れちゃったし。 ]
純也は先に行ってるとも何とも言わずにその場から黙って帰ってしまうし、こんな場所で井上と話し込んでるとまた下世話な男たちに見つかるだろうと思ったけど…
その時の私にはそんな事より、先で待ってる純也をうんと待たせて少しは気を揉ませてやろうと思った。
[ それよりあなた…
私に何か言いたい事あるんじゃないの? ]
[ 言いたい事? ]
今朝の私なら、井上に朝から陰毛の件まで問い詰めちゃいそうな勢いだった。
一種のトラウマみたいになりつつある混乱に負けてたまるかと、私は無防備に抵抗する。
[ 何もないの?
話しはそれだけ?… ]
[ 言いたい事は…
たくさんあるけど… ]
[ 言ってみなさいよ。 ]
[ あ…ハンカチ…
大事にするよ。
それと…新しいの買って返すから… ]
[ そんな事なの?
言いたい事ってそんな事?
いらないわ、あんなのたくさん持ってるし… ]
なぜか私は井上を責めていた。
親切にしてもらったのに、純也や男子たちの鬱憤を井上ひとりにぶつけていた。