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『春』
【ファンタジー 恋愛小説】

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『春』-5

夜になり、やっと嵐はおさまっていた。
月明かりの下、肌寒い風が吹いている。

「…夜だな」

「そうね」

「夜のお前も美しい。
儚さが増している」

「ふふ、ありがとう。
誰かさんのせいで、130%くらいになった気分よ?」

「腕は痛くないか?
縄痕は、付いてしまっていないか?」

拘束は、雨の弱まりはじめた夕方に取り払われていた。

「いやぁね、あんなに激しくしておいて。
身体がぎしぎし言っていたわ」

「…すまなかった。
どうしても、抑えることができなかった」

「いいの。あれもまた、あなたの愛だものね。
世界中を飛びまわって、たまにしか会えないあなたなのだもの、強い刺激の方が、身体に刻みつけておける―」

「…寂しいのか?
明日からは、また暖かく抱いてやる」

「うん、そうして?
あとちょっとの間だもの、たくさん可愛がってね」

そう言って彼女は彼に口づけると、疲れた体をいたわって眠りに落ちた。
彼も、彼女の額に貼り付いた髪を払ってやると、彼女を抱き寄せて眠った。



また朝が来た。
太陽の光は、熱を送り、惑星を暖めた。

「おはよう、さくら。
今日は、イイコトを思い付いたんだ」

何やら御機嫌な彼に、彼女は不審を抱く。

「さぁ、今日も君の姿を見せてくれ。
本当に美しい…。
ねぇ、さくら?
君も、自分の艷姿を、見てみたいだろう?」

「…へ?」

思わずマヌケな声を出してしまう。

「さぁ、こっちを向いて、さくら」

振り向くと、光が目を射た。


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