危険なお留守番・女子高生由真-1
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「一晩だけだから、お兄ちゃんと二人で留守番お願いね」
母親からそう言われた時、真っ先に由真の頭に浮かんだのは「アレ」のことだった。
母のクローゼットの中にある、古びた段ボール箱の中身。
「アレ」がどんなものなのか、もう一度じっくり見られるチャンス……。
そう思うだけで、由真は後ろめたい期待感で胸がドキドキと高鳴るのを感じていた。
数週間前―――。
普段あまり入ることのない両親の寝室で、由真は母親のクローゼットの中をひっかきまわしていた。
高校のクラスメイトの中でも特にオシャレでみんなの憧れの的である優子が、母親の若い時に着ていたワンピースを、譲ってもらって着まわしているという話を聞いたのだ。
優子日く「本当にいいものは何年たっても古く感じない。むしろそういう物を大切に着るのが本当のオシャレ」なのだそうだ。
安易に真似をしたからといってすぐ優子みたいになれるわけではないのだけれど、そういう「ちょっとカッコイイ情報」というのはとりあえずやってみたくなるのが女子高生の性(サガ)なのだ。
由真の母親は年齢の割にはスレンダーで、顔もそこそこキレイなほうだ。若い時はきっとそれなりにオシャレだったと思う。
優子のいう「本当にいいもの」を一枚や二枚は残しているかもしれない。
そう思いながら、先程からありそうな場所をあちこちひっぱり出してはみるのだが、それらしきものはなかなか見当たらない。
「―――若い時の服は実家に置いて来てんのかなぁ?……やっぱお母さんに聞かないとわかんないや……」
そう呟いて扉を閉じようとした時―――たくさんの服がぶら下がったクローゼットの一番下に隠すように置いてある小さな段ボール箱が目にはいった。
「……ん……?」
いかにも長い間開けた形跡がなさそうな古びた段ボール。
「……ひょっとして……昔のアクセサリーとか……?」
想像したよりずいぶん軽いその箱をベッドの上に引っ張り出し、何故か厳重に封をしてあるガムテープをビリビリとはがしていく。
「こんなにしっかりとめて……すごいお宝だったりして……」
アクセサリーなら、洋服よりかえっていいかもしれない。
ワクワクしながら蓋を開けてみたが―――中には様々な種類のタオルが無造作に丸めていくつも入っているだけだった。