双子の姉妹。 7-7
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「ちーっす」
夕方、再び櫛森家へ。
リビングに入ると、そこでは麻琴がソファーの上で腹を出して寝ていた。
「…やっぱり相当お疲れだな」
そう言いながら、捲れたシャツを元に戻してやる。
そのとき麻琴からは、琴音と同じいい香りがした。
「…一気に麻琴の見方が変わったでしょ」
おばさんがリビングから声をかけてくる。
「…そうですね」
たしかに、あどけない顔して眠っている麻琴は今まで以上に可愛く見えた。
「大変だと思うけど頑張って!」
絶対楽しんでるだろ、この人。
***
「せんせと毎日会ってるのに、勉強久しぶりだね」
「そうだな、ちゃんとやってたか?」
今日は久しぶりに琴音の勉強。
いや、間隔は今までと変わらないはずなんだけど、毎日会うのに麻琴に付きっきりなのもあってかなり久しぶりに感じる。
「せんせに出された課題も終わってるし、来週の最終模試も大丈夫だと思う」
「よーし、いい子だ」
琴音は自信満々だ。
心なしかテンションも高い気がする。
「……ねえ、せんせ」
ドキッとした。
すぐに思い出す。
あの観覧車のことを。
琴音のこの声は、そういう話をするサインだと。
「……ん?」
「告白の返事は、受験が終わってからでいいからね」
告白の返事。
あのときはうやむやにしてしまい、気がかりではあったけど琴音が追求しなくてありがたいと思っていた。
それにしても、やっぱりおばさんが言ったとおり、今は大学合格が最優先なんだな。
「……わかった」
「……うん!」
でもそうだ、いつかは告白の返事をしなければいけない。
どういう結末を選ぼうとも、必ず。
俺にできるのだろうか。
「それとね」
「ああ」
「せんせはお姉ちゃんが好きなの?」
「っ!?」
琴音、やっぱりお前は時々大人っぽい。
こんな駆け引き、俺はしたことないぞ。
…されたこともないぞ。
「あたし、お姉ちゃんだったら負けちゃうからさ」
「………」
これもおばさんの言うとおりでした。
俺のほうが…きついです。