双子の姉妹。 7-5
俺は紅茶を少し口にしてから今の現状をおばさんに話した。
「相談したいと言ったときとは、少々事情が変わってきたのですが…」
俺が二人を好きなこと。
自惚れた考えかもしれないが、それでもどちらかを選ぶことはできないこと。
琴音が俺に告白したこと。
「…それで昨日、言われたんです。俺が琴音と付き合うなら大学落ちてもいいって」
「…麻琴は琴音が俊哉くんに告白したことは知らないのよね?」
「おそらく。決めつけた感じだったので」
「……そう」
おばさんは少し考える素振りをした。
そして、手を叩いて言った。
「じゃあ、二人とも付き合えばいいのよ!」
「わかりました…ってええ!?」
なんてことを言うんだこの人は。
自分の娘がそんなことされていいわけあるか!
「だって麻琴は俺のことなんか好きじゃないでしょうし…」
「……え」
おばさんは突然、唖然とした顔になる。
「え?」
「俊哉くんって、相当鈍感なのね…」
「え…まさか…麻琴が俺のことを好きだなんて…」
「なに言ってるの。好きに決まってるじゃない」
「……えっと」
おばさんがあまりに自信満々に言うので言葉に詰まってしまった。
「第一、麻琴が琴音より先に俊哉くんの大学に行きたいって言ってたんだから」
「……え?」
突然の真実に完全に言葉がでなくなってしまった。
「麻琴は俊哉くんと出会った頃から、俊哉の大学ってどんなところなんだろうって言ってたし、最近よく言ってたのは、俊哉の面倒はあたしが見ないといけないわね、なんだから」
「……そんな、でも麻琴は俺の大学を受けることを秘密にしてて…」
「正直、成績を見て諦めかけてたんだと思う。だからこの間、俊哉くんが無理じゃないって言ってくれてうれしかったと思うの」
「でも麻琴はいつも俺につんけんしていて…」
「あの子はまだまだ内面が子どもだし、気持ちを真っ直ぐにぶつけられないのよ」
「……」
「いい?間違いなく麻琴は俊哉くんが好きなのよ」
おばさんは淡々した言葉に、俺は完全に論破されて何も言えなくなった。
麻琴が俺のことを好きでいてくれているのはわかった。
でもそうなると、いろんな問題が出てくる。
「…やっぱり俺のせいで二人は精神的に辛い思いをしています。俺は家庭教師として失格だ…」
俺の役目は二人の受験を成功させること。
俺が足を引っ張っているじゃないか…
「もちろん俊哉くんだってまだ若い男の子だし人一倍優しいから、一生懸命考えたくなると思う。でも今の二人は、やっぱり一番に俊哉くんの大学に合格することを目標としてるの。だから俊哉くんは、今は精一杯力を貸してあげて」
落ち込みかけた俺に、おばさんは救いの手を差し伸べてくれた。
やっぱりおばさんはすごい。