双子の姉妹。 6-1
「おはよ、俊哉」
「あ、ああ…おはよう、香織」
あれからしばらく経つが、香織の態度は相変わらずだ。
「今日はバイト?」
「え…今日は休みだけど」
「そうなんだ!じゃあまた後でね」
「…おう」
ただ一つ変わったのは、最近は恒例になりかけていた食事の誘いが無くなったこと。
たまにはこれからも仲間内で遊びに行くことはあるんだろうけど、二人きりということはもうないと思う。
今までの行動はやはり付き合うためのものだったのだろう。
いつも面倒だと思いながらも、楽しくはあった。
今はもう香織との接点はほとんど無くなってしまったが、それもしょうがないことだと割り切るしかない。
俺はあの時わかった。
俺は香織じゃなく、双子の姉妹が好きなんだ。
「……はぁ」
そう決心したものの、悩みは尽きない。
年齢の差や、高校生と大学生ということや、仮にも先生と生徒ということはこの際置いておくとしてだ。
双子の姉妹は、俺のことが好きなのか?
そりゃあ、友達として、家庭教師の先生と生徒としては好かれていると思いたい。
ただ、今まで見てきても恋愛感情なんてあいつらは少したりとも持ち合わせていなさそうだし。
ましてや俺になど。
そしてもうひとつ。
俺はどちらを選べばいい?
いや、仮に二人とも好きでいてくれているとして、片方を選べば片方を傷つける。
俺にはそんなことはできない。
「……はっ」
つーか、なに都合のいい妄想をしてるんだ俺は。
正直、自分でも気持ち悪ぃ…
それに漠然とし過ぎだろ!
二人とも好きって何だよ!
二人から告白されたわけでもないのに!
自分で混乱してくる。
ただ、あの日から二人のことを今までと違った目線で見ているのは確かだ。
麻琴は年下のくせに大人びているが、性格はたまに子どもっぽくて。
琴音は年下らしく子どもっぽいが、性格はたまに大人びていて。
どっちも見ていて面白いし可愛い。
結局、どうしたらいいんだろう。
考えはいつも振りだしに戻る。